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実は・・・

本日すぐに二個目ですが、実は去年あたりからちょこちょこ小説を書いていました。
小説とはいえませんね。
小話??
お話???
みたいなの????
思い切って載せたろうかなーと。
最初だけ載せるので、興味のある方は続きを読むをクリックしてくださいな。
意外と長い・・・です・・・?



月に明かす

八月十六日。西の空が鮮やかな茜色に染まり、あぁ、明日もいい天気だなぁと思いつつ、思い思いを胸に早くこの暑い場所からクーラーのある涼しい我が家へ、と足早に歩いているその時、一人の男性がようやっと起きてきた。
今頃起きてきてなんてやつだ、けしからん、とお思いの方もいるでしょうが、この男性は朝早くに起きて仕事をしていたのです。と本当は書きたいところですが、実は今日の朝、お天道様が顔を出した頃に夢の世界へと入り、今のそのそとまだ眠たいなぁとぶつぶつ文句をいいながら起きたところなのです。それには訳があります。身なりはどこにでもいる平凡な男性ですが、中身・・・もやっぱり平凡な男性だったりします。そんなどこにでもいる平凡な男性が働きもせず、何故朝から夕方まで寝ていたかというと、それは昨日の夜に原因があったのです。
昨日は日本人の誰もが知っていそうで最近の人の大抵が忘れていることの多い、十五夜の日だったのです。
え?何故それが朝寝の許される理由かって?まぁまぁ、少し待ってくださいよ。それを今から説明するのですから。


そう、それは昨日の話。つまり八月十五日のこと。
その日の彼は今日みたく夕方に起きだすようなまねはせず、ちゃんと朝に起きて家事をしてから会社に出勤しました。九時ごろ会社に着き、そのまま仕事道具を持って街へと出かけます。彼の仕事はカメラマン。なかなか評判のカメラマンの彼には野望があるのです。それは自身の作品集をいつかだしたいというもの。仕事の合間をみてはその作品のための写真を撮りに出かけていました。
いつもと違うのは昼、太陽が南中に昇ってくる頃に会社に戻り、同僚と短な会話した後、家に帰宅したのです。
彼が帰り支度をしている時にいつもより早く帰る彼を不思議思ったのか後輩カメラマンが驚いて、もう帰宅されるのですか?と聞いてきました。たまたま近くにいた長年の友人が、こいつはいつも八月十五日は昼に帰って次の日は休むんだぜ、と口を挟みました。好奇心に駆られた後輩カメラマンは、何かあるのですか?と聞いてきました。彼はそれに対して軽く笑って誤魔化し、そそくさと逃げるように会社を後にしたのでした。
おそらく理由を話しても信じてはくれないでしょう。
家に帰って軽く昼食をとり、そして今度はカメラだけを持ち外へと出かけました。
何をしに行ったか。
それはもちろん写真を撮りに出かけたのです。 
彼は夢中になって外の風景、とりわけ空を撮っていきました。彼はいろいろな表情を見せる空が大好きなのです。真夏の今の季節では暑いはずなのに、汗一つかかず次々と写真を撮っていきます。そのどれも言葉では表せないような写真でした。なるほど、こんな写真を撮るのだから人気も高くなるのでしょう、と納得いくような写真ばかりです。私は写真に詳しくないですが、素人の私が見てもなんと心が高ぶってくることでしょう。
気がつくと頭の上にあった太陽は西へと沈み、夕明かりがあたりを照らしていました。
「おや、もうこんな時間か」
彼は独り言を呟くと、カメラを鞄にしまい家へと帰り始めました。ようやく家についた頃、あたりは夕闇に包まれていました。
彼は太陽が沈み、月が上がってくるまでのこの少しの間の空が一番大好きでした。その大好きな空を家に入る前に、ぱしゃり、と撮りました。撮影もおしまいだな、どこかさみそうな、でも何かを長い時間かけてようやく仕上がったような満足そうな声で言いました。その声は誰に聞かれることも無く、大好きな空へと吸い込まれて消えました。
しばらく空を見上げていましたが、こうしてはいられないと思い直し、少しの未練を断ち切るかのように勢いよく家の中へと入っていきました。
昨日作っておいた料理を冷蔵庫から取り出し、電子レンジで次々と暖めていきます。その他に買ってきたお菓子やおつまみ品を皿へと開け、縁側へと運びました。
今日は一年ぶりにある人と会う日なのです。そう、毎年八月十五日に会える特別な人なのです。
すべての準備が整い、彼は縁側に座って一息ついていました。
「やぁ、久しぶりだね」
 と、突然隣から声が聞こえてきました。
この家には彼しかいないはずで、やってくる人の姿も玄関からおじゃましますの声さえもありませんでした。いや、玄関の鍵はちゃんと閉めたはずなので勝手に人がはいることもできません。
 しかし彼は微塵も驚きを出さず、ごく当たり前のように顔には笑みを浮かべていました。まるで、あらかじめいきなり人が隣に現れるのを知っていたかのように。
 「君か。相変わらず元気そうだね」
 彼は忽然と姿を現した男性が少し透けていて、男性の身体が少し発光していることも気にせず、ついこの間も会ったよね、元気かい?とでもいうようにとてものんきそうな声で話しかけました。
 「まぁ、ぼちぼちでんな」
 現れた男性も自分が不自然な現れ方など一切してないかのような涼しい顔をしています。
 「元気か・・・って、もうすでに死んだ人間に対して元気かと聞くのもなんだか変な感じだな」
 そう、彼はすでにこの世の者ではないのです。だから突然人が現れても驚かずに、のんびりとしていたのです。彼は毎年八月十五日、この世とあの世がつながるこの日だけ現世に現れる、いわゆる一般的にいう幽霊という存在だったのです。
 「まぁまぁ、年に一度の無礼講ですぜ。酒と料理でも食べてくださいな」
 彼は男性に向かって自身が暖めた料理を勧めます。男性は乾いた笑いを見せ、では、いただきましょうと料理を口にした。
 しばらく二人は無言で食べ物を口にしては酒を飲み、酒を飲んでは食べ物を口にするという繰り返しをしていました。意外にも生身の身体ではない男性も普通に食事をしています。これもまた、八月十五日という特別な日だからでしょうか。
 最初に沈黙を破ったのは彼のほうでした。
 「さすがに今日の満月は一味違うなぁ」
 空が大好きな彼。もちろん空に浮かんでいる月も、星も同様に好きなのです。
 「お前はどんな月が好きだ?」
 「唐突だな」
男性は少しの間考え、
「どの月も好きだが、季節で言うと冬の月が好きかな。それもうんと寒い日の。いわゆる寒月というやつだな」
「それは何故」
「空気も澄んでいて、はっきりとみえるだろ。月も星も。俺ははっきりしたのが好きだからな」
 「ふーん」
彼は少しつまらなさそうな、それでいてどこかさみしそうに声をだしました。
 「おい、お前自分から聞いておいてふーんはないだろ。そういうお前はどうなんだよ」
 「俺か?俺はどんな月だって好きだ!」
良くぞ聞いてくれましたとばかりに彼は立ち上がり、自信満々に月に向かって大きな声で叫びました。
 「雨の日の雨月も、今にも雪が降り始めそうな雪待月も、月が霞んではっきりしない薄月も、清く澄んだ明月も、全部好きだ!」
月に向かっての大告白をするだけしたら満足したのか、月からの返事など期待もしていないのか、彼は叫ぶだけ叫ぶと再び座り男性の方に顔を向けた。
「なぁ、月と写真って似てるよな」
 「なんだよ、また唐突だな」
 男性はあれこれ話題を変える彼に苦笑しつつも、表情はどこか真剣だった。
 「どうしてそう思う?」 
「月はいろんな表情をする。春夏秋冬でも違うし、雨が降るとまた違う表情を出す。曇りの日、雪の日、天気の良い晴れた日。一年を通して同じ表情をしていることなんてほとんどないだろう。同じ日でも一刻一刻と表情を変えていく。それに見る人によっても表情は変わってくる。写真も同じだ。誰が撮っても同じ写真なんてどこにもない。同じ物を撮っても撮る人によって違ってくる。同じ写真を見ても、見る人によって変わってくる。誰が撮っても違うし、撮るものによっても見る人によっても、また違う。例え同じ人が同じように同じ物を二度撮っても、一つ目と二つ目とではどこかが違うんだ。それに同じ写真でも見る人によっても、また違ってくる。そこが写真の面白いところでもあり、怖いところでもあるんだけどな」
「どうして怖いんだよ」
怪訝そうに男性は彼に問いかけた。面白いのと怖いのはまったく相容れないものなのではないか。
「だってそうだろ。例えばジェットコースター。急降下して怖いけど、その怖いのが面白いという人。スリルが好きだという人。それと似たようなものさ。ようは胸がどきどきするんだな。どんなに良い写真が撮れても、次の瞬間とてつもなく悪い写真を撮ることがある。それが怖いが、逆に良くないと思った写真を撮った次の瞬間になんて素晴らしい写真だろうと思えるものだって撮れる。視点を変えると、悪いと思っていた写真だって良いものに見えたりもする。逆もまたしかりだがね。そこがまた、面白いんだよ。月も写真も見る人、場所、時間によって様々な表情や見え方をすると思わないかね」
男性は肯定も否定もせず、沈黙を守った。
そんな男性に気にした風も無く、彼はまた一口、酒を口に運ぶ。
「それにしてもなかなかこの酒は旨いな。それにこのおつまみ、柿ピー?最初は辛いだけだと思っていたが、ピーナッツと一緒に食べるとなんともいえず旨いなぁ」
 「年に一度の無礼講、だろ。まだまだ夜は更けたばかりだぜ。ゆっくり飲もう」
 二人の上を月が優しく見守っていた。
 「そうだ、お前こんな言葉知ってるか?」
 そういって話を切り出すのは彼の役目なのかもしれない。男性はほとんどしゃべらず彼が話すのを黙って聞いている。時折相槌を打ったり、彼が話し易いように言葉を挟むぐらいしか声をださない。
 「なんの言葉だい?」
 静かに男性は訊いた。
 「月に明かすって言う言葉」
 「月に明かす?」
 「そう、月に明かす」
 男性はなんだいそれは?というふうに眼で訊いてきた。彼は男性がこの言葉を知らないようだと知ると、少し上機嫌になって話だした。
 「月に明かすっていうのはな、月を見ながら夜を明かす、という意味なんだぜ。つまり・・・」
 彼は少しもったいぶったように言葉を止める。
 「つまり?」
 もったいぶらずに話せよ、と男性の目が言っている。
 「つまり、今の俺たちなんだな」
 しばしの沈黙のあと、男性が小さな、しかし彼に聞こえるぐらいの声で呟く。
 「月に明かす」
 今まで『笑う』という表情を見せなかった男性の顔に、笑みが浮かぶ。
 「なんか、少しかっこいいな」
 「だろ」
 彼はにっ、と唇の端を持ち上げて笑った。
 それから彼らはたわいもない話をした。もちろんもっぱら話すのは彼のほうだけれども。料理の話、どのおつまみはどの酒に合うか、部屋が広いと掃除が大変だろうとか、奥さんと上手くいっているか、子供の様子はどうかとか、そして仕事の話をしている頃には東の空が徐々に明るくなってきていた。
 「もうすぐお別れだな。最後にお前に礼を言わないとな」
 「礼?」
 いきなり何を言うんだこいつは、というような感じで男性は彼に問いました。
 「あぁ。ようやく俺の仕事も終わりだ。今日、最後の一枚を撮ったよ」
 「そうか」
 一体何の話しなのか。傍から聞いているとよく分からない言葉も、男性には理解できているのか、納得した表情でした。
 「逝くのか」
 めずらしく男性の方から彼に向かって問いかけをだしました。
「あぁ」
 「納得のいく写真が撮れたのかい」
 彼はただ黙っていた。しかし男性にはそれが肯定か否か分かったのか、
 「そうか」
 とだけ呟いた。
 「さみしくなるな。お前とこうやって一晩中語り合うのが楽しみだったというのに」
 「なにがさみしくなる、だ。最初は嫌がっていたじゃないか。俺がこうやって向こう側から来て、お前の身体を俺に一日貸すのを」
  彼の言葉だけを聞くと怒っているかのように聞こえるが、口調は冗談めかした感じでした。彼は本当は怒ってなどなく、男性もそれが分かっているように軽い口調で返しました。
「そりゃ誰だって最初は嫌がるさ」
 「お前の親父さんなんか『僕の身体でよければ』とすすんで貸してくれたぜ」
 「俺の親父が変なんだよ。昔から人には見えないものが見えていたからな。俺の一族はそういう体質らしいが、俺はお前以外見えたことなんて一度も無いんだ。仕方ないだろう。いきなり現れて、『お前の身体を貸せ』なんてさ。」
 「あの時のお前の顔は見てて面白かったぞ」
 昔のことを思い出したのか、男性は少しむくれた表情をした。
 「大体お前は唐突なんだよ、いつも。・・・今回だって」
 暁の空が徐々に二人の間に入ってきます。
 「さみしくなる」
 いつの間にか空の星々が消え始め、月も出番がもうすぐ終わりとわかるように下手へと徐々に近づいている。男性は彼が月と同じように消えることを知っているので、もう別れの時が近づいているのがはっきりと目に見えるのが嫌なのか、視線を空の月から庭の方へとやった。
 「お前の親父やじいさんにも礼を言っといてくれ。元気に俺は逝ったってな」
 しんみりした空気が嫌いなのか、ただの性分なのか明るい口調で彼は言った。
 「祖父は先月お前達の世界に旅立ったよ。・・・会わなかったのか?」
 「会ったよ」
 にやり、と男性はシニカルに笑った。
 「お前ってヤツは・・・。じゃあ礼は自分で言えよ。お前の一番の友達だろ。それにもうじいさんが死んじまったって知ってるのに、どうやって俺が礼を言えるんだよ。皮肉のつもりか。むしろ俺がおまえに『こっちは元気でやってるから、おまえみたいに未練残してこっちに帰ってくるなよ』って伝えてもらう側なのにさ」
 「なんだよ、それころ俺に対する皮肉だろ」
 ひとしきり二人で笑いあった後、
 「お前のじいさんは俺と違ってなんの未練も残ってないだとさ。」
 「そうか」
 空が明け初め、もうまもなく月が顔をひっこめる。もうすぐ、彼はいなくなってしまう。もう少し、もう少しだけ彼といさせてくれ。男性の儚い願いをあざ笑うかのように、刻一刻と空は明るくなっていく。
 「もう、時間だ」
 彼が言うと、彼の身体から淡い、男性と同じような透き通った者が出てきた。これこそが本当の彼の姿。その外見は二十五歳ぐらいの青年だった。
 彼の本当の姿がすべて現れたとき、どさっという音がした。本来男性がいるべき身体の中にそれを動かしていた人が誰もいなくなったことで、糸が切れた糸つり人形のように地面に倒れた音だった。
 「本当に今までありがとな。俺はもう逝くけど、おまえはまだ来るなよ」
 彼に曙光がささったとき、そこに彼の姿はなかった。
 「あいつは最後の最後まで・・・。俺の体なんだから、大切に扱えよな。あいつが俺の体をでたら、俺の体は倒れるということに気づかないのか」
 男性は動かなくなった自分の身体の眺め、誰にともなく呟く。その声がかすかに震えていたが、それを聞いていたのは今しがた現れた太陽だけだった。
 男性は自分のあるべき身体へと帰る。そして一晩で食べ散らかした皿やらゴミを台所へと持っていくと、大きな欠伸をして寝室へと向かった。
 「さて、寝るか」
さすがにこの年になると徹夜はつらい。しかし来年からは徹夜をしなくても良いし、妻や子供と一緒に里帰りができる。嬉しい反面、どこか寂しい。でも、これが本来の彼なのだ。彼はすでに亡くなった人間で、本当なら現世でやり残したことを行うことなどできやしないのだ。
そこを人には視えないものを視ることができた彼の友人、つまり男性の祖父がこの世とあの世が一番近くなる八月十五日だけ身体を貸すことができると持ちかけたのだ。そして彼の遣り残したこと、彼自身の最後の写真集を出すために三代渡って身体を貸したのだ。
ずっと祖父が身体を貸せば良いのではないかという話もあるのだが、年をとるにつれて体力がなくなり無理だそうだ。
まぁ、亡くなった人物が写真集など出せるわけもなく、ただそれに彼が気づきたくなかったのか、ただ彼は彼が満足いく写真を撮りたかったのか、ただ親友よりも先に逝ったことがさみしく祖父がなくなるまで待っているうちの暇つぶしだったのか、今となっては誰にも分からない。案外飄々とした彼のことだ、後者なのかもしれないな、と男性は祖父が亡くなったとたん『お別れだ』とさよならした彼を疑っていた。しかし男性は心の中で、彼は本当にただただ自分が納得のいく写真を撮りたかったのだろうと思っていた。彼の一ファンとして男性は彼の最後の写真集を作ってやりたかった。それが例え無理な願いであっても。
 男性は夜通し起きていて、尚且つ毎年しているとはいえ慣れない幽体離脱でへとへとになっていたため睡眠を欲求している身体に負けられず、いそいそと布団の中にもぐりこんだ。どうせ明日は休みだ。
男性は夢の中で彼がカメラ片手に男性の祖父と仲良く写真を撮っている風景をみた気がした。夢の中の彼らは久方ぶりに会う親友と再び同じ道を歩けることをお互い喜んでいるように見えた。

というわけで男性は朝に寝て夕方、太陽が西に沈む頃にようやく起きたのでした。
 
2007年1月25日~27日
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Author:藍
趣味は親父も真っ青なほど寒い親父ギャグを作ること。
最近めっきり関ジャニ∞にはまり中。
なかでも大好きなのは渋谷すばる君です。
おすすめの曲は『Eden』と『ONE』

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